0024. 野党に欠ける大局的な国益観
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2025年11月21日掲載
高市早苗総理が10月21日に就任して、今日でちょうど1か月。この間、首脳外交、国会論戦ほか、いろいろ動きがあった。その中で無視できないのが、日中関係の悪化だ。本日までに、中国からの日本への事実上の渡航規制、日本産水産物輸入の事実上停止など、事は経済・国民生活への影響にも広がっている。
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事の発端は、11月7日の衆議院予算委員会での質疑である。
質問に立った、立憲民主党の岡田克也元外相は、高市総理が2024年の自民党総裁選で、台湾有事を存立危機事態の例に挙げていたことを取り上げ、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を中国に封鎖された場合など、どのようなケースが当てはまるのか、などと、執拗に総理に答弁を求めた。
そこで、高市総理から出たのが、
「戦艦を使って、武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」
という答弁だった。
もう少し詳しく言うと、中国が台湾統一のため武力で攻撃し、「戦艦」で海上を封鎖する。アメリカ軍が来援し、それに対して武力行使が起きる。高市総理はこうした状況を例示して、答弁を行った。
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たちまち中国側はこれを取り上げ、猛抗議した。
中国の薛剣駐大阪総領事は、SNSのエックスに、
「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」
と、信じられないような過激な言葉で投稿を行った。そして、中国政府も、
「今年に入ってから日本の治安が悪化し、日本で中国人が襲われる事件が多発し、未解決のものもある」
「日本の指導者が露骨な挑発をおこない、在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」
と、ありもしない情報を公式に発信し、日本への渡航自粛を呼びかけた。
事態を受けて、日本の外務省の金井正彰アジア大洋州局長が訪中し、中国外務省の劉勁松アジア局長と協議した。しかし劉氏は、協議後に報道陣に協議内容について問われた際、「もちろん不満だ」「(会談の雰囲気は)厳しかった」と答えた、と報じられた。
中国からの日本への事実上の渡航規制、日本産水産物輸入の事実上停止と、観光収入・輸出の減少など、経済面での事態の深刻化が懸念されている。大きな国益の損失だ。
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なぜこんなことになったのか?
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ここまで書くと、高市総理が言葉を発したことがいけなかった、という印象を与えるかもしれない。しかし、事は国会での質疑の中で起こった。答弁というのは、聞かれたことに答える動作である。最初に問題を提起したのは、質問した側の野党、立憲民主党の岡田克也議員の方だ。
先日のテレビでの、元衆議院議員の杉村太蔵氏の次のような発言が、印象に残った。
「岡田克也さんと言えば、党の代表も、外務大臣も副総理も務めた人だ。その人が、執拗に高市総理を問い詰め、発言を引き出した。結果このような事態になった。こうなることは予想できたはずなのに、誰も得しないようなことを、なぜしたのか疑問だ。」
まったく同感だ。
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私の記憶では、たしか平成17年(2005年)の4月か5月頃、国会質疑で、時の小泉純一郎総理大臣に対して、当時野党第一党だった民主党の議員が、小泉総理の靖国神社参拝に対する姿勢について執拗に問い詰めたのと、状況が似ていると思った。
答弁の内容は失念したが、それに対して中国政府は反発し、たしか当時の中国の副首相だった人物の訪日・小泉首相との会談の予定を、嘘をついてドタキャンした、ということがあった。
それから20年の時が経ったが、まったくこの国のやることは卑劣を通り越して、幼稚で悪質だ。国家としての品位を欠き、無礼で、無責任で、犯罪性さえ帯びている。
高市総理も、靖国神社参拝については比較的積極派という立場であるが、「神社を参拝しないことくらい、我慢すればいいだけの話ではないか」という人もいるかもしれない。しかし、立場を変えて考えてみるとどうなるか。
ムスリム(イスラム教徒)は、毎日5回の礼拝を欠かさない。それを、外部の人からの「祈ることは我々の国民感情を傷つけるから」というような理由でやめさせられたらどうだろうか。物理的には祈りをやめたからと言って、それ以外のことに直接影響はないだろう。しかし、現実には、そのようなことはあり得ないと思う。キリスト教徒だって、日曜日に教会に行くのをやめさせられることには反発を覚えるだろう。靖国神社参拝の話も同様、ある人にとっては、日本人の生活様式の一部なのである。中国人だって、それを変えさせられたら、反発するはずだ。日本人の無形の心の支えであり、「精神性」と言ってもいい。
東日本大震災の時には、あれだけの悲惨な災害にもかかわらず、避難所などでもルールやマナーを守り、盗難・略奪・暴動などを起こさなかった日本人の国民性は、世界から称賛された。そうした、日本人独自の、先人が築き受け継いできて育まれた精神性が損なわれることは、「国益の損失」には当たらないか? 日本には、
「鷹は飢えても穂を摘まず」(節義の士は、窮しても不義の財を貪らない)
「渇しても盗泉の水を飲まず」(いかに困窮しても不正不義の財は欲しがらない)
ということわざもある。
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また話は飛ぶが、私の元には、毎日平均して数十通の迷惑メールが届いている。もう近頃は慣れてきて、「ここをクリック」とある箇所にマウスカーソルを当てて表示されるURLの国別コードの多くは「cn」、すなわち中国だ。これが犯罪がらみの搾取へとつながっていると思うとぞっとする。
このような相手が背後にいる場合にやってはいけないことは、小学生が考えても分かる理屈のはずであるが、野党第一党の党首や、政権担当時の外務大臣・副総理を務めた岡田克也氏の脳みそには、それを考慮する能力もないのか?
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国益を損なうために働く政治家など、いらない。
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©2017 KONISHI, Shoichiro.