0021. 政治家のあるべき姿を見た

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2025年7月7日掲載

 本日行われた、静岡県伊東市の田久保真紀市長の記者会見。同氏は会見早々に、市長を辞職し、改めて市長選挙に立候補し、市民の信を問うことにしたと発表した。



 事の経緯を簡単に述べると、今年の5月に行われた伊東市長選挙で氏は初当選し、翌6月に発行された伊東市の広報誌に「東洋大学法学部卒業」と記載されたが、市議会で学歴を偽った疑いがあると指摘され、氏は今月2日の会見で「卒業の確認はできずに除籍されていた」と認めた。これを受けて本日、市議会の本会議で、氏に対する辞職勧告の決議案が全会一致で可決された。氏は本日昼頃に、「進退については、本日行う会見で説明したい」と述べ、上述の会見に及んだということである。

 公職にある者の学歴詐称というのは、あってはならないことである。氏の罪は重い、と、私も思う。



 しかし、である。振り返って、国政はどうか?

 昨年10月の衆院選、石破茂政権は、選挙の勝敗ラインを、「自民・公明の与党で過半数」としていた。そして結果は、その半数を割り込んだのである。明確に負けたのだ。

 にもかかわらず、石破総理は政権の座に居座った。敗戦の弁はこうであった。

「厳しい声を謙虚に厳粛に受け止めなければならない。」
「しかし、国政は一時たりとも停滞は許されない。」
「国民生活と日本を守ることで職責を果たしていきたい。」



 また伊東市の田久保市長の話に戻って、市長の発言を追っていくと、以下のものだった。

「たくさんの市民や関係者に大変迷惑をかけた。改めて深くお詫び申し上げたい。本当に申し訳ありませんでした。」
「大学の記録では『除籍』になっている。市の広報誌に『東洋大学法学部卒業』と記載していた件については、事実に反することを認める。」
「卒業証書は検察庁に提出することにした。検察の捜査にすべて任せたいと考えている。」
「検察庁に上伸したのち、速やかに辞任したいと考えている。必要な手続きを終えたら短期のうちに辞任する。」
「一度きちんと辞任をして自分の進退を決めたのち、改めて市民の皆様の判断を仰ぐために再度、市長選挙に立候補したい。」
「卒業証書だとする書類について、自分の中では本物だと思っているが、証明が取れないので、きちんとした捜査機関に調べてもらい結果を伝えたい。」
「検察に調べてもらうことは勇気がいるが、真偽を示すにはこの手段しかないと思って決断した。」

 学歴詐称という、やった事は重大だが、その後に言った事が、いちいち納得できる。

 このことで、伊東市で会社を経営する男性が、公職選挙法違反の疑いで警察に刑事告発したり、伊東市職員の労働組合が謝罪や詳しい説明を求める要請書を市長に手渡したりしたそうだが、同じ市に暮らす者、市の職員として働く者から怒りの声が上がるのは、やむを得ないことであろう。そして、市長の希望通り辞職・その後の再立候補が叶えられたとして、選挙で厳しい判断を下されることは、いわば避けては通れない「洗礼」という事だと思う。

 しかし私は、今の世にあって、あえてこの態度を立派だと思う。人として。



 石破総理は上述した通り、選挙の前に自らが設定したハードルを越えられなかったにもかかわらず、政権の座に居座った。

 明確に選挙に負けたのである。トップが責任を取らなければならない。それをしなかった。政治家は言葉が命のはずである。この明らかな敗北の前に責任を取らずして、どの言葉を信じろというのか?

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 折しも、今は参院選の真っ只中である。参議院でも、与党の過半数割れが現実味を帯びている。結果はどうなるか、神のみぞ知る。


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