0004. 楽しかった土曜の午後
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2023年5月25日執筆
大人になってから、同じ関西出身の同年代の人との会話に上る話題が一つある。それは、「土曜の午後は楽しかった」という話だ。
私たちの子供の頃は、土曜日の午前は授業があり、昼になって家に帰って来る。昼ご飯をだらだらと食べていると、午後1時からテレビで「吉本新喜劇」が始まるのだ。聞いただけで気が抜ける独特の「♪フンワカパッパ、フンワカフンワカ…」というメロディーに引き込まれ、続く新喜劇の役者たちが一人ずつ持っている、マンネリを通り越してみんな分かり切っているお決まりのギャグを立て続けに披露し、分かり切っているのにみんなが大爆笑し、私達もテレビの前で笑い転げていた。私は小学生で、昭和50年代だった。
昭和60年になって、NHKで土曜日の正午のニュースのあとに始まったのが、「バラエティー生活笑百科」。最初は仁鶴室長ではなかったそうだが、私の記憶しているのは笑福亭仁鶴さんが相談室長、相談員として、上沼恵美子さん、桂ざこばさんらが出演し、面白おかしく話を盛り上げていた。
中でも番組の名物となった、上沼恵美子さんのホラ吹き。「大阪城に住んでいる」とか「琵琶湖は我が家のもの」とか「淡路島からジェット機で通っている」とか。爆笑した琵琶湖ねたのくだりを一つ、記憶の限りで。
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上沼
「皆さんご存じでしょ、滋賀県にある、あの琵琶湖。あれ、元々うちのものやったんです。」
仁鶴
「ほおー、あの琵琶湖は、元々上沼家のものやったんですか。」
上沼
「そうなんですよ室長。あれは元々、『上沼(かみぬま)』いううちの沼やったんです。それがいつのまにか、ちょっと大きいからとかなんとか言われて、『近畿の水がめ』とか呼ばれたりしてみんなが勝手に使って名前も『琵琶湖』やて。何が『琵琶湖』や! せめて『恵美子』!」
うまい、と思った。
ほかにも、確か1995年頃の、日本でAPECだかサミットだかが開催されたときに、当時のアメリカ大統領のビル・クリントンが、「日本には美しい女性(上沼)がいる」と言って、妻のヒラリー氏が嫉妬して、「クリントンがクリンっ、と」(上沼の魅力に)いかれた、とうそぶいたり。
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2022年4月9日に番組は最終回を迎え、私は偶然その回だけ見た。久しぶりに出演した上沼さんが思い出話を語っていたが、27歳から出演していたらしい。その頃は「浪花のヤング主婦代表」と紹介されていた、と語っていたが、私も確かにそう紹介されていたのを記憶している。それがいつ頃からか、「人生バラ色、おしゃべり七色」と変わったが、これは最終回での上沼さんいわく、40代になって「ヤング主婦」というのはおかしい、と、視聴者からクレームがついたそうだ。それは知らなかった。
「…生活笑百科」は37年の幕を閉じたが、「吉本新喜劇」はいまなお放映中である。私は今は新喜劇を見ていないが、これを見て土曜のお昼を楽しく過ごしている人もいるのだろう。楽しい思い出だった。
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