君はぼくのものだよ。 だから、誰にも触らせない。 見せたくもない。 ああ、早くぼくだけのものになっておくれ・・・・・・・ |
キミオモウコイゴコロ -1- |
時は12月の始め。 剣菱 悠理はやっと終わった期末試験の結果を見て喜びを噛み締めていた。 「この2週間。清四郎に付きっきりで勉強見て貰ったんだからこの結果は当然だよな。あのスパルタはもうヤダヤダ」 赤点なしの成績表を生まれて初めて見て、悠理はとても嬉しかった。 「そうだ。今から清四郎に見せに行こう!」 悠理は勢い良く席を立つと、いるはずであろう生徒会室、もとい有閑倶楽部の部室へ向かった。 部室へ行くと清四郎が一人、窓の縁に腰掛けて外を眺めていた。悠理は「清四郎!」と叫ぶと清四郎に抱きついた。 「おおっ、と。何ですか悠理。危ないじゃないですか」 悠理を抱き止めてホッと息をつきながら言った。 「怒る前にこれ見てみろよ」 そう言って手に持っていた成績表を清四郎の目の前で広げて見せた。 「こ・・・・・れ、ほんとに悠理の?」 「あったりまえだろ!」 清四郎はしばらく悠理と成績表を交互に眺めていた。 「あっ・・・ははは・・・!。すごい、凄いですよ、悠理!!。オール赤点なしのオール50点以上じゃないですか!!!」 「だろ、だろ!、あたい凄いだろ!!。この2週間、無事に冬休みを過ごすためにお前のツラ〜〜イスパルタ教育受けたもんな。これくらいやって当たり前だい!!」 「とにかく、よくやりましたよ!!」 二人は笑いながら抱き合って喜び合った。 清四郎こと菊正宗 清四郎はこの学園の生徒会長で学力優秀、武芸にも富んでおり、菊正宗大病院の院長の息子でもある。今年もみんなで冬休みを過ごそうと、悠理の勉強を見ていたのだ。いつも赤点だらけの悠理を全部50点以上にするとは、誰でもができることではない。 「これはみんなが楽しみですね。野梨子と魅録はいいとして、問題は可憐と美童ですね」 「あいつらこれ見たらびっくりするだろうな。なんせ内緒でやってたしな」 二人は嬉しそうにほくそ笑んだ。 「あ、清四郎何が欲しいんだよ」 悠理の問いに清四郎は訳が分からず首を傾げた。 「ほら、言っただろ。いい点とれたら礼としてお前の好きなもんやるって」 それを聞いて悠理の問いの意味が分かった。 「確かにそう聞いてましたね。―――でも今欲しいものがこれといってないんですよ」 「え―――?。あ、ほら、何とかの血清とかは?」 「ああ、自白剤のことですか?。それはこの前手に入れたんですよ」 「あ――――じゃあほかの薬とか、コンピューターとか・・・」 「間に合ってますよ。―――お礼はしばらく待って下さい。欲しいものができたらお願いします」 「そっか」 悠理はそう言うと椅子に座った。 「悠理、あなたが僕に何かお礼をくれると言うのなら僕もあなたに目標達成のお祝いのプレゼントを差し上げますよ。大した物は上げられませんが、何がいいですか?」 清四郎はそう言って窓の縁から降りるとコーヒーを入れるためにサイフォンを手に取った。 「ん―――――それならさ、また今度のテストのときに教えてよ。今回やれたんだ。またいい点取れそうな気がするしさ」 「それならお安い御用ですよ。またビシバシ教えて差し上げますよ」 「・・・あ、それはちょっと遠慮するかも・・・・」 顔を見合わせると、二人は笑い合った。 「あら、二人共ここにいたわよ」 黄桜 可憐を先頭に松竹梅 魅録、白鹿 野梨子、美童グランマニエが入ってきた。 「どうかしたんですか?」 「ただ二人誘ってここに来ようと思ってたのに二人共いないから探してただけよ」 「すみません、調べ物をして疲れていたのでここで休んでいたんですよ」 今コーヒーをいれますよ、と言って清四郎は人数分のカップをテーブルに並べ始めた。 「悠理はどうしたんだ?」 「あたい?。あたいは嬉しくて清四郎に報告に来たんだ」 悠理のニコニコ顔にみんなは首を傾げた。 「何ですの、その嬉しいことというのは・・・・」 「じゃ――ん。これを見たまえ!」 悠理は手に持っていた成績表を4人に広げて見せた。 「・・・うそでしょ・・・・」 「天変地異だよ」 「マジかよ、これ・・・」 「悠理が赤点ナシなんて・・・。しかも全部50点以上だわ・・・・」 4人は呆気に取られた様子で呟いた。 「すごい、すごいですわ、悠理!!」 「ホントすごいよ、お前。どうしたんだよ一体・・・」 「へっへーん。この2週間、命がけで勉強したもんな」 悠理の言葉に2人はおおっ、と唸った。 「どうしよ、僕赤点1個あるのに・・・」 「私は2個もあるのよ。あの悠理に負けるなんて・・・・」 美童と可憐はボソボソと耳打ち合った。 「何コソコソと話してるんです?、美童、可憐」 そこを目ざとく見つけた清四郎が二人に声をかけた。 「いや、何でもないよ。な、可憐」 「そうよ。いやーね、清四郎・・・」 乾いた苦笑いをする二人を見て清四郎はクククッと意地悪く笑った。 「なあ悠理。お前一体どんな勉強したんだよ」 魅録が不思議そうな顔をして悠理に聞いた。 「おっしえな――――い!」 「あ、こら待て!。ちょっとくらい教えろよ」 「いたたた!。やめろよ魅録!!」 「不親切な奴には羽交い絞めの刑だ!」 じゃれ合う二人を4人は笑ってみていた。 ・・・・とそこに ガッシャ――ン、ガッシャ――ン・・・。 という破壊音と共に部屋の窓ガラスがいきおいよく割れ出した。 「みんな、伏せるんですよ!!」 清四郎の言葉にみんなキャーキャーわめきながらその場に座り込んだ。 次々と硝子が割れていく中、清四郎はふと何かおかしいと思い、顔を上げた。それは、硝子が割れているのにも関わらず自分達の方の窓ガラスは割られていない事だ。では、どこが割られているのかというと、悠理と魅録がいる方の窓ガラスが割られている。 「・・・・・終わったようですね」 静かになったところを見計らって清四郎は溜息を付きながら立ち上がった。 「みんな大丈夫ですか?」 清四郎の声に各自それぞれ「大丈夫」と答えて窓の側から離れた。 「ん?。悠理、どうしたんですか。もう大丈夫ですよ?」 座り込んだまま立ち上がろうとしない悠理に清四郎が声を掛けるが返事を寄越さなければ立ち上がろうともしない。 「おい、どうした?」 近くにいた魅録が不審そうに悠理に近づく。すると、 「あっ!?」 と声を上げて悠理に触ろうとしていた手を引っ込めた。 「清四郎、早く来てくれ。悠理の肩に大きな硝子が刺さってる!」 「何ですって!?」 叫ぶとすぐに悠理に駆け寄った。見ると、左肩に大き目の硝子が刺さって血が流れ出ていた。 「これはいけない。すぐに病院に運ばなければ!」 清四郎は素早く電話に飛びつくと119を押した。 「・・・ったく、誰がこんなこと・・・」 救急車で病院に向かった悠理と清四郎を送り出した後、部室に戻ってきた4人は硝子の破片の酷さに呆気に取られていた。そして魅録の手には硝子の破片の中から拾ったパチンコの玉が握られていた。 「誰だか知らないが、たぶん外からこのパチンコの玉で窓ガラスを割りやがったんだな」 魅録はそう言って溜息をついた。 「犯人が分かったらただじゃおかないから!。この大事な顔に傷が付いたらどうすんのよ!」 「そうだよ。キズが付いたら女の子達が寄ってこなくなるよ」 可憐と美童が意気投合したように顔を見合わせて言った。 「そんなことよりこの硝子を片付けましょう。それから悠理のお見舞いに行きましょう」 野梨子の言葉に他の3人は同意すると硝子の破片を片付け始めた。 その頃、病院では悠理がキズの手当てを受けていた。 「どうですか、先生」 診察室から出て来た意志を呼び止めて清四郎が聞いた。 「見た目ほど深くは刺さっていなかったので、2週間もしたら傷は塞がりますよ」 「そうですか。ありがとうございました」 そう言って頭を下げた。 しばらくすると悠理が包帯を巻いて診察室から出て来た。下着姿で・・・。 「悠理!」 清四郎は慌てて持ってきていた悠理のコートを着せてやった。 「清四郎、もういってーのなんのって・・・・・」 ぐすん、と目の縁に涙を浮かべた顔で言った。 「あなたらしくないですね。――――とにかくもうお金も払ってありますから帰りましょう。タクシーを表に待たせてありますから」 清四郎がおやおや、といった顔で慰めるようにけがをしていない反対の肩に手を乗せた。こくんと悠理は頷くと清四郎と一緒にゆっくりと歩き出した。 タクシーに乗り込むと悠理が薬のせいかすぐにうつら、うつらとし始めた。 「悠理、僕の肩に頭をお乗せなさい。眠っていいですよ」 そう言うとさっそく頭を乗せて眠り始めた。 (こうやってみると、悠理も美人なのにいつもがガサツだからな・・・) 清四郎は内心そう思うと、ククッと小さく笑った。 剣菱家に着くと、悠理を起こさないようにそっと抱えてタクシーから降りた。タクシーを見送ってから玄関に向って歩いていると、勢い良くドアを開けて有閑倶楽部の面々が出て来た。 「悠理!!」 「悠理、大丈夫か!?」 大声を出す4人に清四郎は「静かに!」と小声で制した。 「なんだ。悠理の奴寝ちゃったのか。てっきり青筋立てて怒りまくってると思ってたのに・・・」 魅録がつまらなそうに言った。 「それより清四郎、早く悠理をベットに寝かせてやって下さいな。風邪を引いてしまいますわ」 野梨子の言葉に頷くとみんなで悠理の部屋に足早に向った。 「悠理様、悠理様!」 ベットに寝かせたところで、じいの五代が駆けつけてきた。 「大丈夫ですよ。今は痛み止めの薬が効いてぐっすり眠ってるだけですから・・・・」 「そうでございますか。若様と奥様が居られません。お聞きになったらさぞお嘆きになられるでしょうな」 五代はそっと胸元からハンカチを取り出すと、そっと目元を拭った。 「・・・・では、我々は帰りますか。――――ああ、悠理を暴れさせないようにして下さい。傷口が開いてしまいますから・・・」 清四郎はそう言い残してみんなと一緒に剣菱家を出た。 5人は一緒に夕飯を取るべくイタリア料理の店に入った。料理を注文した後、魅録は清四郎にパチンコの玉を見せた。 「これ、硝子を割ったものですか?」 「話しが早いな。その通り。たぶんこう、Yの字のパチンコ、あれで狙ったんだろうな」 して見せながらそう言った。 「指紋は・・・・付いてませんよね」 「ああ。一つ一つ確かめながら拾ったがどれにも付いてなかった」 「そうですか・・・」 さして残念そうもない顔で言った。 「ねぇ、これってさ。僕たち狙われてんのかな」 美童の言葉に他の4人はう――んと唸った。 「全員が狙われたか。この内の誰か一人だけが狙われたのか、どっちかだな。――――しかし、僕には思い当たる事はないな。みんなはどうだ?」 清四郎の問いにみんなは知らないとばかりに首を振る。 「あとは悠理だが、あいつは・・・・ありすぎるんじゃねえの?」 「確かに・・・」 「中学の時から喧嘩してのしてきた奴らがその対称だとしたらごまんといるしな」 「悠理は狙われてとうぜんだろ」 5人は顔を見合わせるとはぁ、と溜息を付いた。そこに注文していた料理が運ばれてきた。 「・・・・考えるのはまたにして冷めないうちに頂きますか」 話し合いはそこまでで、違う話題に華を咲かせながら夕飯となった。 |
| 初のノーマルカップリング小説です。 しかも今のところ人間掛け算できるようなところは少しも出てきていません。まだまだ序章といったところでしょうか。 前から書きたいと思っていた有閑倶楽部小説。いかがですか? 2001,02,19 UP |