オミにタキを紹介して、今のところ欲しいものも具合の悪いところもないことを確認したあと、タキとカーヤは部屋を出てあたしをオミと2人きりにしてくれた。オミはまだ声を出すのがつらくて、それに少し頭がボーっとしているみたい。もしかしたら明け方ローグが飲ませてくれた薬がまだ効いてるのかな。ゆっくり視線を動かしながら、周囲の様子や自分の身体の具合を確かめていたから、あたしはしばらく黙ったままオミの様子を注意深く見つめていたの。
 すごく、長い沈黙だった。オミはやっとあたしを見て、そして言ったんだ。
「ユーナ。…父さんと母さん、死んじゃった…」
 あたし、オミの身体は包帯だらけで手を握ることもできなかったから、唯一怪我をしていない右の頬に触れた。
「あたしがいるよ! オミにはあたしがいる。これからずっと傍にいるから」
「…ユーナ、ありがと。…でも、母さんと父さんは死んじゃったんだ…。ほんのちょっと、すぐちょっと前まで生きてたのに、瞬きするくらいの間に、もう父さんじゃなくなって…」
 オミの表情がゆがんで、声を詰まらせて、目から涙があふれていった。涙はすぐに零れ落ちて包帯に吸われていく。あたしはハンカチで頬をぬぐってあげることしかできなかったんだ。オミが見てきたものと同じものを見たいなんて思わなかった。
 なんだか心が凍り付いてしまったみたい。目の前で涙を流しているオミが、すごく遠い存在に感じたの。オミの目の前で死んだのは、紛れもなくあたしの両親だったのに。
 オミは涙を止めることができなくて、あたしのハンカチはすぐにぐっしょりになってしまった。
「あたしがいるよ。…オミの傍にはあたしがいる」
「…ユーナ、…ユーナはオレの願いも聞いてくれる…?」
 あたしがうなずくと、オミは涙を浮かべたまま、あたしの目を見ていった。
「あいつを…あの化け物…村から追い出して。もう2度と、村の誰も踏み潰さないように」
 あたしは、もう1度うなずくことしか、できなかった。
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