ここでは、弥生の小説のなんだか訳の判らない設定たちがいったいどうやって生まれたのか、そいつを徹底分析しています。まあ、単なる暇つぶしってヤツですかね。
茜色のラビリンス
- ストーリー
- 平原茜
- 若原聡
- ユーリル&フローラ
- リカーモンド王国
- ストーリー
- 釜本一郎
- 唯川逸実
- 森村&山崎(刑事)、倉橋貢
- おばさんの別荘
- ストーリー
- 渉&裕
- ピジョン=ブラッド
- 惑星クラプト
- 人間
- 動物たち
- ストーリー
- 裕&渉&慶
- イーグル(神)
- 火の国
- ストーリー
- ラグナ=シェル&レセス=レセ
- 赤い砂と赤い風
ストーリー |
簡単に分類するなら、女の子の変身願望をかなえてしまうという、けっこう単純なお話ですね。書いたきっかけは、コバルト文庫の中に入っていた小説新人賞作品募集のリーフレットです。原稿用紙250枚以内ということだったので、応募するかどうかはともかくコバルト向けの小説を書いてみようじゃないか、と思ったんです。ところが書いてみるとこれが私の悪癖なんですけど、何しろ長かったんですよ。そこで今度はただひたすら枚数を短くカットしつづけて、そのうち応募期間が過ぎていきました。まあ、最初から応募する気はなかったんですけど。
何しろお話のテーマが変身願望なので、舞台が異世界というのはすぐに決まりました。やっぱり美しさの基準て、国によっても違いますけど、地球じゃなければきっともっと違うでしょう。それに、日本語が通じてくれないと、私も茜もめちゃくちゃ困ってしまうので。お姫様にさせたいからさらわれたお姫様とそっくりという設定にして、書いているうちにさらった理由とか、ユーリルがきた理由とか、つじつまあわせを余儀なくされ、最後のどんでん返しにたどり着きました。そんなモンですよ、私の話の作り方なんて。 少女マンガの鉄則のハッピーエンドでまとまられたので、まあよしとしようじゃありませんか。 |
平原茜 |
これはもう、外見はもろ高校時代の黒澤本人です。微妙に違うところはありますけどね(体重とか身長とか顔とか……て全部か)。平均的な引っ込み思案の女の子を書いたつもりです。本人のコンプレックスが顔と体型と性格だけなので、割に書きやすいキャラではありました。
彼女の鈍さにいらいらした方も多いと思います。はたから見てれば若原君の気持ちなんか一目瞭然なんですけどね。でも、一人称の話でこのいらいらを出すためには、これだけ鈍くなければダメなんですよ。これも物語の進行上の必然です。少女小説は一人称が基本だという私の思い込みも影響あるので。 この体験がその後の彼女を変えたかというと、実はそれほどでもなかったと私は思います。そんなに簡単に変わりませんよね、人間の本質なんて。 |
若原聡 |
名前と外見とエピソードの一部は、私の高校時代の同級生からいただきました。(若原君を知っている方、本人にチクらないでね、恥ずかしいから……て、本人が見つけたらそれまでか)あまり話したこともないので性格はよく判りませんが、やたら目立つ人だったのは確かです。でも、一度電話で話したとき、「誰でも人と接するのってそれなりに怖いんじゃん?」的なことを言っていて、「ああ、こんな元気な人でもそうなんだな」と認識を新たにした覚えがあります。そういうところもしっかりお話に生かしてしまってますね。これってもう小説書きのサガとしか言いようがないですけど。
若原君は、ひたすらかっこよく、でもちょっとかわいいキャラとして書いたつもりです。伝わってるといいのですけど。 |
ユーリル&フローラ |
ドラクエが大好きな方なら知ってると思います。ユーリルは、シリーズ4の久美沙織さんの小説の勇者の名前からいただきました。フローラはもちろんシリーズ5のルドマンさんの娘さんです。ユーリルは茜とは全く対極のキャラとしてお話に登場しました。茜から見れば彼はものすごくきれいなのに、顔にコンプレックスを持っています。愛する人がなくなってから更にひねくれてるみたいですね。でも、自分の立場をちゃんと理解していてここ一番の時にはしっかり責任を果たしていたのは立派ですね。いつか彼にも幸せが訪れることでしょう。
まあ、要はただ単に美少年が書きたかっただけなんですけど。 |
リカーモンド王国 |
うちの近くに「りっちらんど」というパチンコ屋がありまして、割に女性向きで時々行ってたんですよね。その「りっちらんど」をフランス語にしたのが「リカーモンド」です。(果たしてフランス人に通じるかどうかは不明ですが)。首都リカームとハドルの離宮しか出てきませんが、もちろん他にもさまざまな地名があって、名前のとおり豊かな国です。この国の王女は成人するまで離宮で教育されるという掟がありますが、その他にも風習として、最初の子供は母親にちなんだ名前を付ける、というのがあります。だからフローラの母親がフレイラで、ユーリルの母親がメリルなんです。王妃のフレイラは実は記憶を亡くして迷い込んだ日本人だった、なんて闇設定もあったんですけどね。不発で終わりました。 |
ストーリー |
書いたきっかけは、MARIMBAさんの知り合いが自分の本に載せる原稿を欲しがっている、ということで、そのために書きました。例によって10ページくらいという要望に対して25ページも書いてしまったせいか、テーマが突飛すぎたせいか、結果はボツだったようです。
幼なじみという設定は、川原泉氏の「バビロンまで何マイル?」というマンガですね。そろって本好きで勉強家の二人が出てきて、ノームの指輪でタイムスリップしてしまうんです。そんな話を書きたかったんですが、私は歴史は詳しくないので(はっきり言って調べるのがめんどくさい)単に事件に巻き込まれることにしました。頭文字の地名は実在しますが、剣道に関しては私は全くの素人です。はったりでそれらしく書いてますけどね。というか、私の話ではったりでないのがいったいいくつあることやら。 続編を考えてしまうのはもう私のくせのようなものなので、このお話にもあることはあります。でも、最後まで書けるだけの実力はありませんでした。すっかり幻と化してしまったシリーズの第1作目です。 |
釜本一郎 |
どこに行ってもモテまくる男の子を書きたかったんです。苗字はサッカーの釜本(古い!)から。一郎という名前は、父親の設定をしたとき、「この親父ならこういう名前以外付けないだろうな」とか思って付けました。外見は割にかっこいい部類に入ると思います。作中本人が自分の容姿を描写していないので、正直私にもよく判らないんですけどね。(あ、でも確か「身体はそれほど大きくない」って言ってたな。身長170から175ってところか)
最近の少年の軽いところと、いざとなると頼りになりそうで、でもどっか抜けてるところを併せ持った、憎めないヤツです。相手が逸実だから、ワレナベにトジブタ、なのかな。 |
唯川逸実 |
この子は作中に苗字が出てこなかったんだった。なんとなく雰囲気で決めたとしか言いようがないですね。名前の方は、弥生本人の本名で「ミ」がつくせいか、私の作品全般で「ミ」のつく名前が多くなってるんですよね。(ミオとか、伊佐巳とか)主人公じゃないし、とか思ってけっこう適当に名付けました。
私本人もあまり女らしい言葉遣いをしない方なので、彼女の科白は書いててものすごく楽でした。けっこう弥生自身が投影されているキャラクターです。傷つくのが怖くて、さりげなさを装ってしまうところなんかね。たぶん彼女は父親の死に直面したとき、ものすごく傷ついたんだと思います。だから一郎の優しさが嬉しかったんだろうな。いいなあ、幼なじみって。 |
森村&山崎(刑事)、倉橋貢 |
森村&山崎は、名前を考えるのが面倒なときに付けてしまうベスト2、なんですよ。たまたま新井素子にはまった時期がありまして。でも、作中誰も彼らの名前を呼んでいませんね。これじゃ、名前を付けてもあんまり意味がなかったかも。物語の進行上、かなり間抜けな刑事達ではありますが、本物の刑事さんはもっとしっかりしてると思います。(最近不祥事多いけどね)
倉橋は高校時代の後輩から、名前は敬愛する千代の富士貢様(お相撲さん)からいただきました。一本気な性格が災いしてしまったんだと思います。けっこう気に入ってたんですけどね、残念でした。 |
おばさんの別荘 |
話を進行するためだけだったらこんなに大きな別荘にする必要はなかったんですよ。これはもうただ単に弥生が大きな別荘を所有したいから。私は作中よくこういうことをやるんですよね。大きな話が基本的に好きなんでしょう。実際の弥生の部屋は3畳間と見まごうほどの微々たる4畳半なので(笑)
壁の仕掛けとか、実際にあったら怖いでしょうね。中で何が行われても誰も気付かないし、万が一心臓発作で危篤状態になっても、誰も助けに来てくれないよ。 |
ストーリー |
前に付き合っていた人と本を自費出版しようという話で盛り上がって、そのつもりで書き始めたお話です。(結局別れてしまったのでボツになりました)SFマガジンの投稿ページ数が原稿用紙100枚だったので、このシリーズは割に100枚におさまるように書いています。(とか言っても投稿したことってないんですけどね)この頃、登場人物がたくさん出てくる話が書けなくて、たまたま旅をするお話が書きたくて、そのほかいろいろな要素があってこういう単純なお話になったような気がします。ラストシーンは、私の根底にある1つのストーリーとつながっています。葛城達也とか、名前しか出てきませんが、この子は私が初めて小説を書いたときの主人公なんですよ。
不幸に終わってしまっているのがちょっと悲しいですね。 |
渉&裕 |
名前を決めるのが面倒で、高校時代に書いていたお話の双子の名前をそのまま使いました。(そのお話は後にリニューアルされて「純白の塔」としてよみがえっています)。作中、この2人だけが漢字の名前なので違和感を覚えた方もいるかな。でも意外に気付かなかったりして。
この2人は、一般的に言う個性というものをあまり前面に出していません。星の自然に従って自然に則した生き方をしているので、現代人ほど精神的な成熟というのをしていないんですね。だからルミノクの子供を見ても、かわいいともかわいそうとも思いません。リグやマトナを残酷とも思いません。この単純さが私は好きなんですよ。私だって牛を殺したことがないだけで、牛肉は好きですからね。そういう現代人の矛盾とは無縁なところで生きていることをうらやましく思うところもあります。 彼らは私の理想の具現なんでしょうね。 |
ピジョン=ブラッド |
藤本ひとみさんの小説で出てきた名前をそのまま使っています。元はルビーの色を表す言葉だそうで、彼の目は最高級の色合いなんでしょう。赤い目と白い髪は萩尾望都さんの「スターレッド」からです。ご存知ない方は一度読んでみてください。最高に面白いです。
私はアウトサイダーというのが好きで、お話の中によく登場するのですけど、2人で生まれるのが大多数の第3世代では彼は立派なアウトサイダーでした。でも彼は自分の運命をちゃんと受け止めて生きています。そういうのがとてもいじらしくて、彼が自分の境遇をさらりと話すシーンはとても気に入っています。ラストの白い髪の彼はちょっと傲慢に見えますけどね。でも彼も根は純粋で悲しいことをたくさん乗り越えてきた人なんですよ。 私のお話の中では葛城達也君と同じくらい古いキャラクターです。 |
惑星クラプト |
月は地球に見せている面を変えませんよね。もしも地球が同じように太陽に見せる面を変えなかったらどうなるかな、なんてことを思って設定したのが惑星クラプトです。更に軌道の楕円が極端なので、かなり厳しい自然環境になりました。公転周期は約74年です。夏の時期は太陽の真下なんか住めた場所ではないし、冬は逆に太陽に最大限近づかないと凍死してしまう。こんな特殊な環境で本当に生命なんて誕生するんでしょうか。専門家が聞いたらあきれるような設定ではありますね。
聖地の近くというのは低気圧なのでけっこういつも雨が降っています。自転しないので台風はこないです。気候としては割に穏やかな部類に入るんでしょうかね。冬が近づいても作中ほど急激に寒くはならないでしょう。そのあたりは設定ミスだと思って笑ってやってください。 |
人間 |
この星は春から秋にかけて生態系のドーナツ化現象が起きてしまうので、伴侶を見つけるのがかなり難しくなってしまいます。そのために人間は一度に2人の子を産んで、繁殖を容易にするように進化したものと思われます。要するに第1から第3世代までは自家受精しているんですね。
変化前の形状は男性ですが、遺伝的には女性です。(このあたりを明確化したのは、新聞で金魚のお話を読んだときですかね。観賞用の形のよい金魚は8割がメスだそうで、ならば最初からメスだけ育ててしまえば効率的だということで、人工的に精子の出せるメスを作って普通のメスと交配させるのだそうです)。自家受精だけでは不都合なので、第4世代が聖地で冬眠するときには双子にはならず、1人で生まれて他の個体と伴侶になります。そのままでは人口が半減してしまうので、個体を増やす役割は第2世代が負っています。 悪魔は知る人ぞ知る「ガルフォース」から。きゃー!なつかしー! |
動物たち |
カタカナの動物がたくさん出てきますけど、原文では全部漢字にルビがついていました。作中のカタカナ語は動物に限らずほとんど全部その形式で書いてあります。(半村良さんの「太陽の世界」に影響を受けました)。一気に紹介しますね。
ルミノク=砂猫 カザム=鹿 リグ=狼 マトナ=虎 ルギド=土竜(もぐら) キラエト=栗鼠(リス) カザムノ=鹿皮 チェルク=短刀 クラプト=大地、地面、領域、縄張など ガイ=男 ルマ=女 他にもありますが、ま、いいでしょ。イメージ違ってましたか? |
ストーリー |
高校時代に書いていたお話を、シリーズの1つに加えるために書き直したのがこのお話です。弥生自身は悲しいくらい記憶力がないので(これ、かなりマジ危険入ってます。普通の記憶喪失じゃないんですよ)、裕並みの記憶力が心底欲しかったんです。中学校の頃、目の見えない人が本1冊分間違いなく記憶している、という話を聞いて思いつきました。その後、短編小説で似たような話を見つけて、更に改良を加えたんだと思います。
筋自体は原文とかなり違いますね。(確か最初の話は超能力者の話だった気がする)。赤い砂を意識して、こちらでは逆に未来の地球が舞台です。でも、根底に流れているのは冬のまほろばと同じ、人間の知的好奇心が身を滅ぼすぞ、というテーマなんですよね。向上心は諸刃の剣なんでしょうか。未だに答えは出せずにいますが。 淡々としすぎていますので、けっこう退屈なお話かもしれませんね。 |
裕&渉&慶 |
渉は名作「由似へ…」に出てくるバイクで死んじゃう男の子からいただきました。(この本は黒澤が泣きたい時に読んでます)。裕は渉と似たような名前と言うことで、慶は友人から無断借用しました。男性は「う」で終わり、女性は「い」で終わる名前がこの時代のはやりのようです。
赤い砂とは違って、この作品の人物は割に個性がはっきりとしてますね。私は自分が個性的でないとは間違っても言えないたちなので、個性を尊重してくれる社会は大好きです。割に理屈っぽいキャラが多いのは私の作品の特徴でもありますけど、特に裕はズバ抜けて理屈屋だと思います。書いてて楽しいキャラではありましたね。 |
イーグル(神) |
幻魔大戦を読んでからだと思うんですが、私ってば作品に神様を登場させるのが妙に好きになってしまったんです。教義なんかを真剣に考えたりして。イーグルはそれほどこだわって作った神ではないのですが、自然発生の神ではなく、イーグルの塔が作り上げた新興宗教のようなものとして位置付けています。
ネーミングは、日曜朝にやっていた特撮変身モノの1人から(だったと思う)。この名前はけっこう気に入っていて(と言うか、考えるのが面倒で)、私のお話のあちこちで使っています。白い髪のピジョン=ブラッドの別名だったり……。裏サイトに行かれたら見てやってください。 |
火の国 |
この項目あんまり書くことないな。大まかなところは作中で裕が全部しゃべったとおりです。単一民族がイーグルの庇護の下で暮らしていて、人口は常に一定に保たれるように物価を調整することで制御されています。住居に関しては個人の所有物ではなくすべて国の管理下にあり、結婚が認められた時点で適当な新居があてがわれます。(国1つが巨大な公団住宅みたいなモンですかね)。しかし許せないのは出版物が一切ないと言う事実。本のない世界になんか住みたいですか? 私は嫌ですよ。
まあ、書いてはみたけど、あまり楽しい世界じゃなさそうですね。 |
ストーリー |
ある作品のパロディで同人活動をしているのですが、RPG風の話で、光の国からやってきた一族(ウルトラマンじゃないよ)という設定を使ったんです。後に彼らは神と呼ばれることになるんですが、その時MARIMBAちゃんに「光の世界の話も読みたい!」とせっつかれまして、この話の1000年後にあたる話を書いたんですよ。(ほとんどヤケって感じでしたね)。その流れで書いたのがこのお話です。一応赤い砂の続編のような構成ですが、書いた順番は全くのランダムだったんですね。シリーズ的にはこのお話が最新のものになります。
前半を書いてしばらく経ってから後半を書いたので、途中で話の筋ががらりと変わっているのはそのせいです。なにしろ一番書きたかったのが2人が赤い砂の砂漠を見ている場面だったので、そのあと気が抜けてしまったんですね。 |
ラグナ=シェル&レセス=レセ |
もともとは違う名前がついてました。HPに載せるために改名したので記憶は新しいです。でも、たいして考えませんでしたね。超適当に名付けました。
シェルは他人と全く関わらずに育ったので、自分の中に矛盾というものをほとんど抱えていません。他者と自分とをはっきりと分けて全ての物事を割り切ってしまいます。私自身そういう人間像が理想なんでしょうね。逆にレセのほうが対比のような役割を果たして、シェルと出会ったことで自分の価値観を変えています。言ってみれば、レセが現代人の象徴なんですよ。シェルのような人間が私の回りに増えてゆくと、私の人生ももっと生きやすくなるんだろうな、なんて、かなり身勝手なことを考えてしまいます。だって、自分のために生きている人間の方が、絶対視野が広くなるし、他人にも優しくなれるような気がしますもん。 最後、遺伝子以外のものを後世に伝えていこうとするシェルの行為は、現代人である私自身の矛盾に対する答えなのかもしれませんね。 |
赤い砂と赤い風 |
これはもう、「ビルマの竪琴」のラストシーンから、としか言いようがありません。最後にナレーションで「ビルマの砂は赤い。風もまた赤い」と入るんですけど、最近のカラーの映像よりも昔の白黒映像の方が赤い砂がよりくっきりと見えたのは不思議でしたね。惑星クラプトの赤い砂の正体は単なる酸化鉄(サビ)です。この砂を加工して人間はチェルク(短刀)を作っているらしい。
赤い風と紫色の空、私も見てみたいですね。 |