荒沢橋の駐車地点からは、しばらく沢の中を歩いた。荒沢谷の水量は結構多く、今日の主目的はヤブ尾根歩きであるから、深みや滝を避けての溯行であった。40分ほどで桂谷の出合に着いたが、尾根への取り付きはさらに50メートルほど上流からにした。ここで山靴に履き替え、渓流グッズは袋に入れて木にぶら下げておいた。樹林帯の急な尾根だが、傾斜も足元も十分に登れるルートだ。今流行のトレランもやると言うKさんに「ゆっくり行きましょう。」と何度も言いながら登った。ブナやツガが多く周囲の景観もすこぶるよろしい。困るほどのヤブも無い。うるさかった沢音が次第に遠くなると、背後には和名倉山に続く仁田小屋尾根が見えてきた。樹間からは北に、おそらく三ッ山付近の稜線が見えている。標高1300メートル付近でやや二重山稜になっていたので、帰りのために赤布を取り付けた。北からの尾根が合する所だが、地形図からはそこまで細かな形状は読み取れない。途中にミズナラであろうか幹回り4メートル程の大木も残っていた。独立標高点1557メートル辺りは下草もなく、ツガの原生林帯であった。やや平地で尾根巾も広々しており、我々は勝手に「ツガ平」と名付けてゆっくり休んだ。「この尾根はほんとに苦労なく登れるいいルートだね。」と話していたら、その先の急登からはシャクナゲが多くなり、やや面倒になってきた。獣道などがある尾根の南西斜面を上手に選びながら進んで、30分足らずで大ダワ北のピークに登り着いた。標高はおよそ1740メートル。正に名も無いピークだが、我々の汗も達成感も心地よいものであった。大ダワまで下り、見慣れたメインルートを確認してその日の到達点とした。荒沢橋から約3時間で主尾根に達するこのルートは、計算上は雲取山まで4時間だ。「今度来る時は雲取往復のつもりで来ようか。」と語り、往路を下山した。
(2009年9月19日)
大洞川桂谷アシ沢中間尾根